めんどくさい研究所

2017/7/5 update
EVENT REPORT #1
めんどくさい研究所 創立記念トークセッション
現在の労働環境やこれからの働き方、そして「めんどくさい研究所」のビジョンを考える——
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2017年6月5日、「めんどくさい研究所」の創立を記念して、スペシャルトークセッションが開催された。セッションのモデレーターにはマイナビニュース企業ITチャンネル編集長の丸山篤氏が、登壇者にはめんどくさい研究所の特別研究員を務める経済入門書作家の木暮太一氏、(株)ネオジャパンのマーケティング統括部プロダクトマーケティングマネージャー・山田志貴氏が登場。めんどくさい研究所の設立の背景から自ら働き方改革を行う方法まで、熱いトークが交わされた。
  • 現場から働き方を変える「めんどくさい研究所」とは?
     トークセッションは、まず丸山氏の「めんどくさい研究所」の設立背景についての質問からスタート。山田氏は、まず「仕事のやりがい」に関する意識調査のリサーチ資料を提示し、このように説明した。
     「『今の仕事にやりがいを感じているか』という問いに対しては、実は半分以上の人が『感じている』と答えています。しかし『働き方に満足しているか』という内容になると、数字が逆転。『不満がある』という声に多くの意見が集中する結果に。さらにその働き方への不満の声を掘り下げてみると、『割り込みの仕事が多い』『社内にムダなルールが多い』『会社が保守的』という声が多く聞かれました」
     働き方の問題に関しては、近年政府も「働き方改革」や「一億人総活躍時代」というキーワードを使用して積極的に現場の改革を進めようとしている。そこで、山田氏がこのような働き方改革についての感想を現場で働く若い世代の社会人にあらためて聞いてみたところ、意外にも「このような働き方の改善は、会社が率先してやるべきだ」という意見が多く集まったのだという。この結果は、つまり「働き方には不満があるものの、自ら変えようとする意識はない」ということの表れでもあるだろう。では、働き方改革が賑わっている今、本当に若い人たちは、会社が変わることを待つだけしか術がないのか——。このような想いから、問題を一から考え、現場からあらためて働き方の改善を図ろうと立ち上げたのが「めんどくさい研究所」なのだという。
     現在、めんどくさい研究所が行っているのは、オンラインとオフラインを使った議論である。入社歴、転職歴が5年目の一般社員を中心に、研究員の参加を募集。そこに集まったメンバーと共に日常の仕事を阻害する様々な「めんどくさい」ことをディスカッションすることで、「『会社文化だから……』と諦めるのではなく、ちゃんと頭で考えて、変えられることを変えていく」ということを狙っている。
     オフラインミーティングには登壇者である木暮氏も特別研究員として議論に加わり、一緒にいろいろな業務のめんどくさいことについて解決法を模索していくと説明した。
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  • 社内の仕事を一変させた、現場からの提案
     次の問いでは、まず丸山氏が近年注目を浴びている働き方改革の多くが「トップダウンで降りてくるもの」であることを指摘。「逆に、社員からボトムアップで改革していこうという盛り上げ方もあるのではないか」と疑問提起を行った。その際、木暮氏は「私が直接当事者になったことはない」と断りを入れながらも、フジフィルム時代のエピソードをこのように話した。
     「私はかつてのメイン事業だったアナログフィルム事業がなくなる直前に入社したのですが、その過渡期の際、最初は『まだ大丈夫だろう』と高を括っていたのです。私の周りも同じで『仕事を改革しなければいけない』ということを口では言うのですが、そこまで真剣になっていませんでした。そして、いよいよ状況が悪くなっていったとき、当時アナログフィルムやインスタントカメラ『写ルンです』を作っていた工場の現場の人たちが、口火を切ったように『こういうコストダウン策があります』『こうすれば効率化できます』と提案をはじめたのです」
     アナログフィルム事業が切迫していたということを考えれば、当時声を上げたフィルム工場の人たちというのは、いわばトップから一番叩かれたり、切られたりしやすい人たちということになるだろう。そのような現場の人たちが自ら「赤字になりそうだから、コストを下げて事業を持ち直そう」と積極的に動き出したことは、社内全体の空気や流れを変えるという意味でとても大きなインパクトがあった、と木暮氏。その瞬間、「必死になれば、何かできるんじゃないか」ということを強く実感したという。
     「口だけで言っているだけでは、エンジンがかかりにくい。そういうときは、少し必死になってトライをするのです。当然、反発されることもありますし、痛い思いもするかもしれません。しかし、そこを恐れずに真剣に向き合うと、案外痛みを感じずにうまく進んでいくことがあるのです」
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  • 働き方改革は、まずは“自分”から
     その後、丸山氏が木暮氏に「自分から働き方改革をしていった事例はあるのか」と質問。しかし、木暮氏は「会社組織は大きくなればなるほど決裁が上層部で行われるようになるため、組織内の物事を変えることは難しい」と説明した。
     「そのため、私が当時行っていたのは、『自分だけの働き方を変えてみる』ということです。例えば、『いつも1時間かかるメールの返信を、今日は30分以内で済ませよう』ということを考えてみる。人を巻き込むことを考えすぎると、上司を説得する必要もでてきたりして、労力ばかりかかってしまいます。そのため、まずはゲーム感覚で目標を決めて、自分から仕事のやり方を変えてみるのがいいではないかと考えたのです」
     また、木暮氏の周囲の人たちの中で、働き方改革を実践している人はいるのかという話題になると、「今よく会う人たちは私と同じ経営者の人たちが多いが、彼らが決まって言うのは『これは売り上げに直結するのかを常に考える』ということ」だと説明した。
     「仕事の種類はいくつかありますが、大きく分けると『価値を生む仕事』と『ただの作業』の2つになると思います。このうちの『ただの作業』は、実はやらなくていい仕事であったりする。そのような案件を極力避けるため、周りの経営者たちは自分たちの仕事を常に見直し、判断する作業を行っています。実は、サイバーエージェントという会社も定期的に『見直し会議』というものを実施していました。『この会議は、本当にやる意味あるの?』ということを振り返って考えるミーティングです。サイバーエージェントはこのようなムダを省く作業を徹底していたため、実際に働いていてもめんどくささを感じたことはなかったように思います」
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  • 大切なのは、地道にムダを取り除く努力
     今回のトークセッションの最後のまとめの中でも、「まずは、自分から働き方改革を行う」ということを強調していた木暮氏。まずは自分から変わり、それがうまくいったら、今度は部下や後輩を巻き込んでみる。そうやって成功事例を増やしていき、結果が可視化できるようになってから上司などに提案するのが重要だと語った。
     このような自らの変化にトライするには、まずは自分の仕事を客観的に捉え、何が無駄を生んでいるのかに気づく作業が不可欠だろう。一度に大きな変化を生むことは難しい。ひとつずつムダを省く地道な作業こそが、社内全体のめんどくささを取り払う近道なのではないかと感じた。
text : Takuo Shibasaki
2017年7月5日更新