綾町は、宮崎市から約20km西側に位置する人口約7,000人の町。日本最大級の照葉樹林が、町の約8割もの面積を占める自然に恵まれた地だ。町全体で行う自然と人の共存を目指した取り組みや照葉樹林を保護・復元するためのプロジェクトなどが高く評価され、2012年には生存圏保存地域(通称ユネスコエコパーク)と認定された。この壮大な自然に魅せられて、都会から移住する若い世代も少なくない。
綾町は、全国に先駆けて有機農業に取り組む「オーガニックの町」だ。日本ではリサイクルという概念が薄かった1987年、家庭ごみなどをリサイクルして有機農業に活用するシステムを導入している。翌年の1988年、綾町は全国で初めて「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定。町全体で有機農業に取り組むことを宣言し、農畜水産物に対して独自の厳しい認証基準を設けた。
現在、有機野菜や綾牛、綾豚など、綾町で作られる農畜水産物は、綾町独自の厳しい認証基準をクリアしたものだけが出荷される。その優れた品質は、全国中で人気となり、綾町の農畜水産物はオーガニックのブランドとして定着している。
綾町の農畜水産物は、町への財政にも大きな恩恵をもたらしている。
2014年度のふるさと納税では、綾町への申し込み件数が全国第1位となるほど申し込みが殺到している。2015年度の実績も約10億円にのぼる。
また綾町は、町の農畜水産物をアピールするため、インターネットの活用にも力を入れている。
2016年7月にはクックパッドに「綾町役場のキッチン」として公式キッチンに登場。ふるさと納税でも大人気の「綾ぶどう豚」や地元の有機野菜を使ったレシピを公開している。
全国でいち早く有機野菜のブランド化に成功した綾町は、ぶどうの搾りカスで育てた綾ぶどう豚や綾牛など新たなブランドを誕生させている。
ブランドが新たなブランドを生み出す。綾町は、わが町の特徴を充分理解した上で、他の自治体と差別化するための戦略を明確に打ち出し成功を遂げている。この綾町スタイルは、地方創生が成功した一事例にとどまらない。綾町を見習い、学ぶ点は多々あるだろう。