「全国学力テスト8年連続日本一」「食糧自給率174%」「持ち家比率・一戸建て比率1位」など多くの魅力を持ち、雄大な自然に囲まれた豊かな地「秋田県」。だが、人口減少率日本一という深刻な問題を抱えている。
人口減少は何も秋田県だけの問題ではない。日本の総人口は平成22年から100万人近く減少している。すでに日本全体が人口減小社会を迎えているのだ。そして先んじてこの問題に取り組んできた秋田県は、ユニークな施策で成果を出しつつある。
秋田県の魅力は、なんといっても自然だ。世界遺産白神山地や鳥海山をはじめとする自然は、四季折々で違った表情を見せ、私たちに感動を与えてくれる。
また、秋田県は祭りや伝統芸能も盛んだ。国の重要無形民俗文化財が国内最多の17件。それ以外にも大小さまざまなものが各地に残っており、豊かな文化のもとで県民が暮らしていることがうかがえる。
そして、自然が育む農業は、豊かな食を提供してくれる。きりたんぽ、稲庭うどん、比内地鶏。そしてお米やお酒。秋田県にはうまいものが多い。
さらに、名湯と言われる数々の温泉、曲げわっぱなどの伝統工芸、秋田犬、秋田美人などなど……秋田県の魅力は簡単には書き尽くせない。
秋田県は、これからの新しい社会構造を創造するために「あきたびじょん」というコンセプトの下、独創的な取り組みを進めている。
具体的には、秋田県が有する多様で豊富な地産や人材を「変える」「活かす」「つなぐ」ことで、新たな価値を創造し、イノベーションを起こせる新世代の人材を育成しようとしている。
いわば、「地産」のみならず「知産」もクリエイトして地域活性化につなげようという挑戦だ。
例えば、教育。平成19年度から行われている全国学力・学習状況調査で秋田県は、連続して全国トップレベルの結果を出している。その要因の特筆すべき点は、教員の高い指導力だけでなく、家庭や地域の教育力も基盤となっていることだ。
それ故か、児童生徒千人当たりの不登校者数や暴力行為の発生件数も全国で最も少ない。
秋田県が注力している自分で考えたことを基にグループや学級全体で話し合いながら問題を解決することで「考える力」「コミュニケーション能力」を育むという授業スタイルは、全国から注目されている。
秋田県では、これまで、沖縄県をはじめ、秋田県の取り組みを参考にしようとする県との人事交流を受け入れてきたが、平成28年度からは、タイ王国の学校で秋田県の教員が授業を行うなど、教育を基軸とした交流は国内を越え、海外をも見据えた新しいステージに向かっている。
次に食品。「米の秋田は酒の国」と呼ばれるほど美味しい日本酒がたくさんある。日本酒全体の出荷量は減少傾向にあるが、海外への輸出量は増えている。なかでも秋田県では、海外への販路開拓に力を入れている所が多く、売上の20~30%を海外輸出が占めている酒造会社もあるほどだ。
さらに、県の試験研究機関である秋田県総合食品研究センターが海外輸出向けの常温流通可能な純米・吟醸酒を開発するなど、酒類製造業の発展を技術面で支援している。
これからの日本では、恒久的な人口増加を実現するのは難しい。しかし、多くの価値資産を持つ秋田県なら、観光目的で流入する「交流人口」を拡大するチャンスは無数にあり、それが県内GDPを増やすことにつながっていく。
交流人口を増やす取り組みとして、DMOをはじめインバウンドに注力する団体・企業も多く出現し、成果が出始めている。
そして次世代に向けた人材育成。子供が自ら学ぶ力を育てたり、若者の活躍を後押しして地域の活性化につなげたり、教育ワークショップをビジネス化したりなど、さまざまな人たちが秋田県で新しい「知産」を創造しようと取り組んでいる。
秋田県がこれから目指そうとしてる姿はどんなものか。佐竹敬久知事はそれを「高質な田舎」と表現する。
“例えば、西ヨーロッパの小さいまちに見られるように、古くからの歴史の中、人々が自然と調和しながら暮らし、田舎ながらも世界中から人が訪れるレストランがあったり、有名な芸術家が住んでいたりする社会であります。
また、そこでは、自然や伝統を守りながら、地域の資源を生かしたその土地ならではの産業が発達しているとともに、学力が高く健やかな子供たちや、仕事や生きがい活動に元気に取り組む高齢者を初め、住民が豊かに暮らしている姿が思い浮かびます。
こうした姿を「高質な田舎」と表現しているものでありますが、農業や観光、再生可能エネルギーなどの素地に恵まれている秋田も、ぜひそうありたいと考えております。(平成25年9月24日 佐竹敬久県知事 本議会答弁より)”