雄大な自然に雪景色、豊かな食、海外からも注目される観光地……
多くの人が北海道に持つイメージといえば、そんなところだろうか。
しかし、北海道の魅力はそれだけではない。北海道は、常に世界や未来を見据えて挑戦し、新たな価値をつくり続けているのだ。
日本全体の約22%を占め、四国と九州を足しても足りないほどの面積を持つ、北海道。大きく道央、道南、道東、道北の4つの地域に区切り、それぞれの特徴を見てみよう。
道央は、北海道経済の中心・札幌をはじめ、風情ある街並みの小樽、ニセコや洞爺湖などのリゾート地、空知や日高などの雄大な自然、炭鉱やアイヌ文化まで、地域ごとに全く異なる顔を持つ。
道南は、青函トンネルで本州とつながる北海道の玄関口。中心となる函館は、異国情緒あふれる街並みや美しい夜景で人気の観光地だ。北海道新幹線の開業でさらなる発展が期待される。
道東では、世界遺産の知床国立公園、ラムサール条約に登録された釧路湿原、オホーツクの流氷などのダイナミックな自然風景が随所に見られる。青空と大地がどこまでも広がる十勝平野は、日本の食糧基地としての役割を担う。
道北は、日本海とオホーツク海に挟まれた北端のエリア。日本最北端の街・稚内や、旭川、富良野、美瑛といった道内でも人気の観光地が点在し、見どころも多い。道産米「ゆめぴりか」が生まれた地としても知られる。
例えば、最南端の白神岬から最北端の宗谷岬までは、直線距離にして約480km。これは東京駅から兵庫県の姫路駅までよりも長い距離だ。広すぎるがゆえに、地域によって気候も風土もバラバラで、ひと言では言い表せないのが北海道の特徴といえる。
北海道は面積以外にもさまざまなNo.1の称号を持つ。特に、食に関するNo.1は多い。
全国の4分の1に当たる耕地面積を生かし、小麦、大豆、馬鈴しょ、てん菜、たまねぎ、かぼちゃ、生乳や牛肉など、全国1位の農畜産物は多数。米作にも力を入れており、作付面積・収穫量で新潟県と1、2を争う。
平成27年 [収穫量(t)] |
平成28年 [収穫量(t)] |
平成29年 [収穫量(t)] |
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1位 | 新潟県 [619,200] |
新潟県 [678,600] |
新潟県 [611,700] |
2位 | 北海道 [602,600] |
北海道 [578,600] |
北海道 [581,800] |
3位 | 秋田県 [522,400] |
秋田県 [515,400] |
秋田県 [498,800] |
四方を海に囲まれた立地を生かし漁業も盛んで、鮭、タコ、イカ、エビ、カニ、ホタテなどで漁獲量1位を誇る。
農業産出額では全国シェアの13.5%、海面漁業・養殖業の生産量では全国シェアの22%を占め、いずれも第1位。これらを背景に、北海道の2015年におけるカロリーベースの食糧自給率は221%。日本の食糧自給率38%と比較すると、その実力がよくわかる。
そして、ブランド総合研究所の調査によれば、47都道府県の「魅力度」調査で北海道は9年連続の1位。多くの人を引き付けて離さない魅力が北海道にはある。
このような北海道の地位は、今となっては驚くようなことではないかもしれない。しかし、過去は違った。
かつて北海道は「蝦夷地」と呼ばれ、原始の森が広がる大地だった。
明治政府の1869(明治2)年、開拓使が設置される。蝦夷地のことをよく知る探検家で、開拓判官松浦武四郎の提案をもとに、蝦夷地は「北海道」と命名される。
明治4年に、開拓使はアメリカ連邦政府の農務局長ホーレス・ケプロンを顧問とするなど、優秀な人材を呼び寄せ、農業、工業、鉱業、医学など様々な分野で活躍した。
「少年よ、大志を抱け」の言葉で有名な、札幌農学校(現北海道大学)の初代教頭ウィリアム・S・クラーク(就任明治8年)も、こうしたお雇い外国人のひとり。
また、明治7年には、道内の開墾を進めるため、18~35歳までの士族が一戸5千坪の土地を給する屯田兵制度をスタートした。
一方で、寒冷地には適さない米づくりに情熱を注ぐ者たちもいた。
開拓者たちの想像を絶する苦労の末、農業を中心に北海道は大きな発展を遂げる。明治維新から約150年の間に、耕地面積115万haを有するNo.1の農業王国となったのだ。
北海道の歴史を語るうえで忘れてはならないのがアイヌ文化だ。アイヌ文化は12~13世紀頃に成立し、15世紀頃からは他地域の人とも活発に交流していたと見られる。
江戸時代には政治的・経済的に支配され、明治期には同化政策を押しつけられるなど、アイヌ民族は苦難の道を歩んできたが、その伝統や文化は現代にも受け継がれている。
北海道に難読地名が多いのも、アイヌ語の地名に漢字を当てはめて付けられているからだ。長い歴史のなかで独自に発展してきたアイヌ文化は、現代の北海道にどのように影響を与えているのだろうか?
命名から150年の歴史のなかで、ダイナミックな変貌を遂げてきた北海道。その発展は留まることを知らない。
例えば食。じゃがいもや牛乳、メロンといった、誰もが知る北海道の特産だけでなく、ワイン、ブランデー、チーズ、エゾシカ肉、米、日本酒など、これから国内外でNo.1になる可能性を秘めた北海道産の食材・食品が次々と登場しているのだ。
そして、新たな北海道を担うのは、他でもない人だ。北海道では、若者のグローバルな挑戦を官民一体で応援する「ほっかいどう未来チャレンジ基金」するなど、未来を担う人材の育成に余念が無い。また、高齢化・人口減少が進むなかで地域経済を持続的に発展させるため、交流・定住促進事業にも力を入れる。
誰もが知っている北海道。その「過去」と「未来」に目を向ければ、新たな一面を発見できるはずだ。