鹿児島県に降り立つと、今までに経験したことのない、「懐かしいようでどこか異質」という不思議な感覚を抱く。
そして不意を突くように、鹿児島の象徴「桜島」が視界に飛び込んでくる。その瞬間、「ここには何かある!」と誰もが理解するだろう。そう、鹿児島県は九州地方の中でも独特の存在感を放つ地なのだ。
鹿児島県は、国内有数の離島県だ。南北およそ600kmという広大な県土のなかに、世界遺産の屋久島、日本で一番宇宙に近い種子島、南の楽園・奄美大島など、大小さまざまな605(有人離島は26)の離島を有する。離島人口および離島面積で全国第1位だ。
一方で山も多い。九州最高峰の屋久島・宮之浦岳(標高1,936m)を筆頭に、神話の舞台となった霧島連山、薩摩富士といわれる開聞岳、そして錦江湾に浮かぶ桜島などがそびえる。活火山がたくさんあることから温泉も多く、源泉数は全国2位。入浴施設の大半が温泉だ。
鹿児島県は、四国、和歌山、千葉などに至る黒潮文化圏の国内最南端。古来、琉球やアジア諸国、西洋諸国などとの交流も盛んで、船での往来が中心の時代までは、異国の情報が最初にもたらされる日本の玄関口だった。
故に鹿児島県を発祥として、さまざまなモノが日本全国に浸透していった。キリスト教、鉄砲、国産軍艦、日の丸、回転式そうめん流し、新婚旅行など。これらはすべて「第一号」だ。鹿児島県は、最先端の文化を発信する土地柄だったのだ。
地理的な要因もあり、多様で独特の文化や価値観が育まれた鹿児島県。加えて温暖な気候と豊かな資源もある。その結果、農業王国、海洋王国、出汁王国、焼酎王国、美食王国など、さまざまな分野で「王国」としての地位を築くに至った。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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平成25年 | 北海道 | 茨城県 | 千葉県 | 鹿児島県 | 熊本県 |
平成26年 | 北海道 | 茨城県 | 鹿児島県 | 千葉県 | 宮崎県 |
平成27年 | 北海道 | 茨城県 | 鹿児島県 | 千葉県 | 宮崎県 |
平成28年 | 北海道 | 茨城県 | 鹿児島県 | 千葉県 | 宮崎県 |
平成29年 | 北海道 | 鹿児島県 | 茨城県 | 千葉県 | 宮崎県 |
・鹿児島黒牛「第11回全国和牛能力共進会」で総合優勝
※肉用牛(黒毛和種)、豚、鶏の飼養(しよう)頭羽数は日本一
・ブリ類養殖の生産量/24年連続1位
・カンパチ養殖の生産量/1位
・ウナギ養殖の生産量/1位
・かつお節の生産量/1位 ※全国のシェア7割以上
蔵元数/114
焼酎の銘柄/2,000以上
鹿児島県は、いい肉と新鮮な野菜や魚、最上級のかつおだし、そして食事に合う芋焼酎……美食に必要なあらゆる素材がそこにある。
たとえば肉なら、全国和牛能力共進会において日本一に輝いた「鹿児島黒牛(くろうし)」。ステーキにすれば、とろけるような食感と濃厚な味わいに至福のひとときを感じられるだろう。甘しょを給与された「かごしま黒豚」は、しゃぶしゃぶがおすすめ。甘くジューシーな食感だ。自由に運動できる環境で伸び伸びと育った「かごしま地鶏」は、タタキ(鶏刺し)にすれば、独特の歯ごたえとコクを楽しめる。
黒潮に乗って春と秋にやってくる鰹(かつお)は、鹿児島を代表する食材の一つ。刺身はもちろん、タタキも絶品。かつお節生産量で日本一を誇る鹿児島県の本枯れ節を使って出汁を取れば、家庭でも極上のうま味を味わえる。
鹿児島県では、美しい景観「雄川の滝、白谷雲水峡、土盛海岸など」を眺めながら、おいしい食べ物と焼酎を堪能し、温泉「桜島を一望できる露天風呂、天然砂むし温泉など」で疲れた体を癒やし、伝統文化「薩摩焼、大島紬、薩摩切子など」に触れて、心と身体を満たすことができる。
鹿児島県に訪れて最初に感じた「ここには何かある!」の正体は、五感のすべてを満たし、幸せを享受できるポテンシャルに溢れた豊かな王国だった。
超一流の音楽家が集うクラシック音楽の祭典、「霧島国際音楽祭」が今年も2019年7月18日から8月4日に開催される。1980年にドイツの音楽家が創設し、志ある音楽家の育成を目的に毎年開催されている音楽祭だ。 世界で活躍する一流の音楽家たちが集い、受講生も交えて2週間にわたり音楽の祭典を繰り広げる。今年は、音楽と映像がコラボするコンサートなど40回の節目にふさわしい公演がもりだくさん。高原での音楽鑑賞で、夏のひとときを楽しんでみてはいかがだろうか。