宮崎県の高千穂町には、アマテラスオオミカミが隠れたと伝えられる天岩戸神社があります。アマテラスオオミカミは太陽の神。天の岩戸伝説の舞台となったとされる宮崎県が「日本のひなた」となったのは、必然かもしれません。
アマテラスオオミカミにはスサノオノミコトという弟がいました。このスサノオノミコトはいつも暴れてばかりで周りを困らせていました。その様子に心を痛めたアマテラスオオミカミは天の岩戸の中に閉じこもってしまいました。外界との接触を自ら断ち、自分の殻に閉じこもったアマテラスオオミカミは、元祖引き篭もりといえるかもしれません。
太陽の神であるアマテラスオオミカミが天の岩戸に隠れた途端、空は暗闇に包まれ、悪いことが次々に起こり出しました。困り果てた八百万(やおろず)の神々は、問題を解決しようと話し合いを行い、「天の岩戸の前で大騒ぎしてアマテラスオオミカミを外に誘いだそう」ということになりました。
天岩戸神社西本宮から岩戸川に沿って10分ほど歩くと、河原沿いに八百万の神々が話し合いをしたとされる「天安河原(あまのやすがわら)」があります。
河原を歩いていると、神々が囁いているかのように川のせせらぎが静かに聞こえてきます。天安河原の中心には仰慕窟(ぎょうぼがいわや)という大きな洞窟があります。
ここは、鳥居とお社が建ち、神聖な雰囲気の中で、八百万の神々が私達を優しく見守っているような雰囲気が漂っています。
アマテラスオオミカミが岩戸に隠れたとき、八百万の神が集まり話し合いをしたとされる河原。現在では無数に積まれた石が神秘的かつ幻想的な雰囲気を一層引き立てている。
さて、いよいよアマテラスオオミカミの誘い出し作戦が始まりました。
天の岩戸の前でアマノウズメという神が踊り、周りの神々は、それをみながら大宴会。外の様子が気になったアマテラスオオミカミは、天の岩戸を少しだけ開けました。
するとアマノウズメが「あなたさまより立派な神がここにおられます」と声をかけ、アメノコヤネとフトダマはアマテラスオオミカミの前に鏡を差し出しました。
そこにいるのは美しい神様。アマテラスオオミカミはもっとよく見ようと身を乗り出したとき、力の神タヂカラオがアマテラスオオミカミの手をグッと引っ張り、外へ連れ出しました。アマテラスオオミカミが再び外に現れた瞬間、地上には太陽の光が降り注ぎ、山も川も輝きを取り戻しました。
アマテラスオオミカミが戸を開けた瞬間に声をかけるアマノウズメ、同時に鏡を差し出すアメノコヤネとフトダマ、そして外に連れ出すタヂカラオと見事なチームプレーで、この地は再び光を取り戻したのです。
日本人は協調性を重んじてチームワークを大切にする民族といわれています。宮崎県の人が温和なのは、知らないうちに八百万の神々の協調性やチームワークのよさを受け継いできたのかもしれませんね。
高千穂の夜神楽は、国の重要無形民俗文化財に指定された踊りで、岩戸の前でアメノウズメノミコトが面白く舞ったのが始まりと伝えられる。高千穂神社境内の神楽殿では、各集落の舞手が毎晩交代で神楽の舞を奉納し、海外から訪れる客も多い。
ちなみに天の岩戸の御神体は撮影禁止です。実際に拝観するには、現地に足を運び天岩戸神社の社務所に申し出るのが唯一の方法です。
間近で神々しい雰囲気を醸し出す洞窟を眺めながら、神々の偉大なパワーを肌で感じてみてはいかがでしょうか。
宮崎県高千穂町に現存する神社。アマテラスオオミカミが隠れたとされる洞窟「天の岩戸」を御神体として祀っている。高千穂の観光スポットとして人気の場所。